「美味しい豚を追求する 〜伊豆の太湖豚について」
「もう趣味で育てている豚だからよ〜」
育ての親の金子渉さんは、太湖豚を我が子のように表現されます。
「バークシャー×梅山豚×梅山豚」「肥育日数300日超、ときには1年超え」、とんかつマニアや養豚に携わる方なら、これらがいかに規格外のことか、うかがい知れるのではないでしょうか?
太湖豚のベースとなるのは「黒豚」です。みなさんご存じの黒豚は、純粋なバークシャー種であってはじめて「黒豚」と名乗れます。金子さん独自の飼料配合で育て上げた「天城黒豚」に梅山豚を2回掛け合わせて誕生したのが「伊豆の太湖豚」です。
「梅山豚」といえば、希少品種の代名詞と言っても良い、柔らかな肉質に豊かな味わいの豚です。美味しさが完成された「天城黒豚」に「梅山豚」を2回交配させるわけですからその美味しさは太鼓判と言っても良いのでしょう。
そんなに美味しいならばもっと生産すれば良いのではないかと思われるかもしれません。そうできない理由があるのです。実は、梅山豚は体質があまり強くないのです。一度のお産で子豚が十数頭生まれるのですが、そのうちの何割かは生まれてすぐ、あるいは病気にもかかりやすいため成長過程で取り残されて死んでしまいます。もちろん抗生物質などに頼ることはありません。肉質が著しく劣化するからです。
また梅山豚は個体が大きくなりづらいのです。出荷できるような大きさになるまで通常の豚よりも遙かに多くの日数を要します。当然ながら餌代もそれだけかかるわけです。丹精込めて育てた豚も体質の弱さから途中で死んでしまえば、それまでかかったコストは水の泡です。つまり、経営効率的にはよろしくない豚と言えるのでしょう。
しかしながら、通常180日前後と言われる肥育日数を大きく超え、300日、あるいは1年を超えてこだわり抜いた飼料を与えた太湖豚は、それだけ多くの穀物飼料を食べることになります。しっかり食べ、じっくり育った梅山豚は、その肉質にうま味が凝縮するわけです。脂身もまさに純白。口にすれば、本当に口の中で溶けていく瞬間を味わえます。
太湖豚は、金子さんの理想の追求の証しなのだと思います。それだけを見れば効率は良くないのかもしれませんが、その中での発見、経験を次なる理想にもつなげられていくのだと思います。
太湖豚のとんかつは、一食すべて、塩もソースも必要ないと思います。それだけ赤身も脂身も肉そのものの味をお楽しみいただけると思います。tonkatsu.jpとしては、究極の豚肉を提供していただいているわけで、太湖豚に笑われないよう、揚げの技術もどんどん進化させていかなければならないと考えています。